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目覚め(1)

2017 01 17
それは、結婚15年を記念する久しぶりの妻との旅行でした。

妻、佐代子は38歳。結婚後、しばらくOL生活を続けていましたが、30歳になる頃に専業主婦となり、以降、私を支え続けてくれてます。

とある大学付属の研究所に勤務する私は、妻の6歳年上で今年、44歳となります。

二人の間に子供はいません。

私は内にこもるタイプで、社交的とは言えません。人と話すこと自体が苦手で、マイペースで研究を続けていくことを好みます。

困ったことに、というか、夫婦似た者同士というか、妻もまた、私に輪をかけたようなおとなしい性格で、人付き合いもあまりありません。

たまにOL時代や大学時代の友人と出かけることはあるようですが、それも頻繁ではありません。

家事に専心する以外、ほとんどの時間は自宅で本を読んだり、音楽を聴いたり、後はこれは趣味と言えるのかもしれませんが、絵を描いてみたりと、ゆったり暮らしているようです。

当然の成り行きですが、夫婦の間の会話はそれほど多くはありません。子供がいて、にぎやかな家庭しか知らない方から見れば、妙なほどに静かな家庭なのかもしれません。

かといって、夫婦仲が悪いというわけではありません。たいていは自宅で夕食を一緒に楽しみますし、随分と数は減りましたが、ベッドでの行為もたまにはあります。

研究畑を歩み続けてきた私は、遊びらしい遊びをほとんど知りません。酒も少しだけたしなむ程度、これは妻も同じです。

私は女遊びとも無縁な人生を送ってきました。

研究所というと堅苦しいイメージがあるでしょう。しかし、男女の関係は結構乱れています。ある意味で密閉された空間にいるからこそ、そんな傾向を産むのかもしれません。

若い女性スタッフも多くいます。私だって男ですので、美しい女性を見て欲情を感じないというつもりはありません。

ただ、私は妻で満足しています。

38歳の妻は、夫の私が言うのも何ですが、いまだ美しく、細身のスタイルを維持しています。

私が愛した女性は、妻一人です。

それは、妻も同じはずです。

半分見合いのような形で知り合った私たちは、結婚前、異性と交際した経験が共にありませんでした。

今では、なかなか似合いの夫婦だと思ってます。

一緒にいて、気疲れしないのが一番です。

妻もまた、今の生活に満たされているはずです。

そんな平凡ですが、波風の立たない穏やかな結婚生活に、ある日、私は少しだけアクセントを加えようかと思いました。

「佐代子、たまには旅行にでも行かないか」
「どうしたの、突然?」
「知ってるだろう、今年が結婚15年だってことを」

私の言葉に、妻は一瞬恥じらうように顔を赤らめました。

「早いわね、あなた。もう15年だなんて」
「ああ」

「でも、それで旅行に?」
「たまにはいいじゃないか。どうだ、1週間くらい」

「そんなに・・・・。研究所のほうは大丈夫なの?」
「有休がたっぷり残っているからね。プロジェクトも一段落したところなんだ」

「あなた・・・・、嬉しいわ・・・・・」
思いがけない提案に、妻は珍しく感情を隠そうともせず、私にそういいました。

私は妻の手をとりながら、聞きました。

「どこに行きたい? 佐代子が行きたい場所にしよう」
「そうね、でも、突然言われても・・・・・」

「海にでも行くか」
「海?」

「ああ。どこか遠くの島のリゾートなんかどうかな」
「この年で水着だなんて何だか恥ずかしいわ・・・・・」

「大丈夫さ。それとも違う場所がいいかな」
「でも・・・・、海なら、あなた、釣りができるかもしれないわね」

「佐代子と二人きりの旅行で釣りはしないと思うけどな」

楽しみのない私ですが、過去に唯一持っていた趣味が、海釣りでした。船酔いをすると言って、結局妻とは一度も行ったことがないですが、妻は私のそんなささやかな楽しみのことをちゃんと覚えていてくれたようです。

「佐代子、じゃあ、少し探してみるよ」

こうして私たちは南の島に1週間の旅行に行くことを決めました。

9月の初旬、まだまだ現地は暑い日が続いていました・・・・・。

今、私はその旅行から戻ったところです。幸い、天候にも恵まれ、それは私たち夫婦にとって大変思い出深い旅行になりました。


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