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目覚め(3)

2017 01 24
「久しぶりに泳いで気持ちよかっただろう」
恥ずかしさを次第に捨て去り、いつしか一人で泳いでいた妻が、ようやくプールサイドにあがってきました。

濡れた妻の水着姿が、南国の午後の陽に照らされています。その色っぽい体つきを私が見つめていることに気づき、妻は素早くタオルで胸元を隠しました。

「何年振りかしら、こんな風にプールに入るなんて」
「みんな、佐代子のことを見ていたよ」

「えっ?」
「さっきね、綺麗な奥さんですねって、他のお客さんに声をかけられたんだ」

「そんな、恥ずかしいわ・・・・・・」
「言ったじゃないか、佐代子はとても綺麗だから自信を持っていいって」

「あなたまで、そんな風なこと・・・・」
珍しく大胆な言葉を投げかける私に困惑しながらも、妻はどこか嬉しそうに頬を染めています。

やはり私が想像した通り、他の客に見られていることに気づき、妻は彼らの視線をどこかで意識していたのかもしれません。

自分の水着姿を見知らぬ男性に見つめられていることを知りながら、泳ぎ続けた妻に、私は妙な興奮を感じたものです。

部屋に戻った私たちは、別々にシャワーを浴びました。妻はいつも以上に時間をかけてシャワーを浴びていました。

その後、私たちはホテル内のレストランで夕食を楽しみました。薄手のシックなワンピースに着替えた妻と一緒に、サンセットを見つめながら。

「乾杯」
今日ばかりは、妻も珍しくカクテルを飲むことに同意しました。ふだんはほとんどアルコールを口にしない妻です。

「きれいな夕陽だね」
「ええ」

水平線が見渡せる素晴らしい眺望を備えたレストラン。他の客たちも次第に集まってきますが、広いレストランはそれほどの混雑でもありませんでした。

それは、私たちがカクテルを楽しんでいるときでした。

「ようこそ。こちらは当ホテルから奥様への贈り物です」
落ち着いた柄の南国特有のシャツがこのホテルの制服のようです。その制服を着た一人の若い男性が、我々のテーブルにやってきました。

「妻にですか?」
「泳がれる女性のお客様にはこうして贈り物を用意させていただいております。もっとも、全てのお客様にではないですが」

「と言いますと?」
「お綺麗な方だけに贈らせていただいてます」

率直にそう言うと、彼は妻に小さな紙包みを渡しました。そして、我々がそれを開けるのを待つこともなく、笑顔を浮かべて言いました。

「素敵なご滞在となることをホテルスタッフ一同、お祈りしております」
そして、軽快な足取りで彼は去っていきました。

「あなた、どうしたらいいかしら」
突然のプレゼントに、妻は明らかに当惑しています。

「せっかくだからいただけばいいじゃないか。でも何だろうね。開けてごらん」
「ここでですか?」
「興味あるな。何を佐代子に贈ったのか」

私は、ホテルスタッフが言った、泳がれる女性で綺麗なお客様だけに差し上げる、という言葉に強く興味を示していました。

丁寧な包装を開けて中身を確認した妻の表情が、恥ずかし気に赤く染まりました。

「あなた、私、こんなものいただいても・・・・・」
「佐代子、何をもらったんだい?」
「これですわ」

妻が差し出した紙の包みを私は見つめ、私は妻が頬を染めた理由がわかりました。

そこには白色を基調にした女性用水着が入っていたのです。見ただけで、それはビキニスタイルでかなり大胆なデザインの水着であることがわかりました。

「私、こんなの・・・・・・・」
それを見つめながら、妻は激しく戸惑い、同時に何かを想像しているようにも見えました。

「きっとホテルの誰かがプールで泳ぐ佐代子を見ていたんだ。それで、この水着を贈ってくれたんじゃないかな」

私はそう話しながら、再び密かな興奮を感じ始めていました。プールで泳ぐ妻の躰が凝視され、このホテルの誰かがこんな大胆な水着を妻に着てもらうことを望んだのです。

妻の躰がこれほどに他の男性の視線を引くという事実、そんな妻の夫であることへの誇らしげな気持ち、そして、確かな嫉妬心。

いろんな気分が混ざり合って、私は激しい興奮を感じていたのです。

「佐代子、せっかくだから着ればいいじゃないか」
「そんな・・・・」

「そんなものを着る機会なんてもうないかもしれないよ」
「それはそうかもしれませんが・・・・」

「それを着た佐代子を見てみたいな」
「いやだわ、あなた・・・・」

恥ずかしがりで内気な妻には、それは随分乱暴な誘いでした。でも、プールで泳ぐことさえ最初はためらっていた妻です。

私は、妻がこの旅行でいつもより少しは大胆に振舞おうとしている様子を感じていましたので、敢えてそんなことを言ってみました。

食事の間も、妻はずっと戸惑い、恥ずかしそうな様子でした。カクテルは結局、最初の乾杯だけでした。

陽が沈み、やがて島に夜がやってきました。ビーチから聞こえてくる穏やかな波音。寄せては返すその音が、南国ムードを高めます。

見上げれば満天の星空が、明日も晴天が続くことを教えてくれています。

「少し歩こうか、佐代子」
「はい」

食事を終えた私たちは、手を繋いでゆっくり砂浜を歩きました。細くくびれた腰に私が腕を回しても、妻に嫌がる素振りはありません。

薄地のワンピース越しに妻の躰を撫でると、まるで素肌に触れているかのような気分になってきます。

「佐代子、来てよかっただろう」
「あなた、ありがとう」

人影もまばらな夜のビーチで立ち止まり、私たちはそっと唇を重ねあいました。妻は素直に私の口づけを受け入れ、逃げようとはしませんでした。

そんな控えめな態度さえも、普段の妻は滅多に見せません。私は、妻が確実に解放感に浸りつつあることを感じました。私は妻の意志を試すように、そのヒップに手を置きました。

「あなた、誰かに見られてしまうわ」
そうささやいた妻は、私の体を少し遠ざけるように腕を動かしました。

「そろそろ戻ろうか」
「そうね、少し疲れました」

「まだ初日だ。今日はゆっくり休むとするか」
「ええ」

まだ暗いうちに自宅を出発し、飛行機、船を乗り継いでこの島に到着したのが昼過ぎ。それからプールで過ごした私たちは、心地よい疲れを感じていました。

その夜、私は妻の躰をかつてないほどに欲していました。昼間、水着姿の妻を見て、私は改めてその肉体に魅了されました。そして、その肢体に他の男性たちの視線が密かに注がれる様子を見て、激しい興奮を感じていたのです。

でも、私は無理に妻を誘うことはしませんでした。部屋に戻った後の妻は、やはり少し疲れている様子でした。

私たちは、夕方と同じように別々にシャワーを浴びて、ベッドに入りました。

すぐに寝入った様子の妻の手を握りながら、私はなかなか眠りに就くことができませんでした。

まだ初日です。明日以降、妻はこのリゾート地にもっと馴染み、今日よりも一層大胆に振舞うだろう。妻のこれまで知らなかった別の面を見ることができるのかもしれない。

私はそんなことを想像し、鼓動を高めていました。

テーブルの上には、ホテルから贈られたビキニの水着が、無造作に置かれています。


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