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目覚め(12)

2017 02 24
部屋に戻った佐代子は、昨日以上の時間をかけて、熱いシャワーを浴びた。

既に海釣りツアーから戻った夫が、リビングで待っている。

陶芸教室からここに戻ったとき、夫はかつて見せたことのないような態度で情熱的に出迎えてくれた。

「佐代子、会いたかったよ」
「あなた、待ってください・・・・」

入口付近で抱きしめてキスを求めてきた夫を、佐代子は何とか押し返そうとした。夫が激しく興奮しているらしいことが、佐代子にはわかった。

それは、佐代子も同じだった。夫に対してではなく、別の理由で。

「シャワーを浴びさせてください」
「また陶芸教室で汗をかいたのかい?」

夫のそんな言葉には、しかし、何かを探るような意図はまるでなかった。佐代子は、夫がただ興味本位で聞いているだけであることを知った。

「教室の部屋はとても暑くて。それに手も汚れましたから」
「じゃあ一緒に入ろうか」

シャワーなど夫と一緒に浴びたことはない。今、一緒に裸になって夫に抱きしめられたら、今日の午後の秘密が露見してしまうかもしれない。

佐代子はそんな不安を強く抱いた。

「すみません、一人で浴びますから」
「どうしても駄目かな?」
「あなた、また夜、一緒に楽しみましょう」

佐代子はこの場をどうにか切り抜けてしまおうと、自分でも後悔してしまうほどの大胆な言葉を口にしてしまった。

妻のそんな言葉に明らかに嬉しそうな表情を浮かべる夫を残し、佐代子はシャワー室に入った。

ワンピース、そして下着を脱ぎ捨て全裸になる。ぐっしょりと湿ったショーツ。人妻の肉体の端々に、その日の午後たっぷりといじめられた記憶が深く刻み込まれている。

どうにかそれを洗い流そうとするように、佐代子は熱いシャワーを全身に浴び始めた。人妻の艶めいた肌が、いっそうなまめかしく濡れていく。

スタイルのいい裸身。形のいい美乳からくびれた腰、丸く張り出したヒップから細い美脚まで濡らしながら、佐代子はまだ鼓動を高めている自分に気付く。

佐代子は、無意識のうちに秘所に指先を伸ばした。目を閉じたまま、そこを撫でるように指の腹を動かしてみる。

あっ・・・・・・・・・

そこはまだ、戸惑うほどに湿っていた。佐代子は唇を噛み、指先でもっと激しくそこをいじめたいという欲情を懸命に抑えた。

躰がこれほどに制御できなくなった記憶など、佐代子にはなかった。川原の息遣い、指先の愛撫、そしてたくましい下腹部の感触を、佐代子は想起する。

徹底的に焦らすように、一番感じやすいスポットには遂に手を伸ばさなかった彼。佐代子は、彼のいじめが今もなお、続いていることを知った。

これ以上、焦らさないでください・・・・・・

浴室の壁にもたれ、佐代子は再び瞳を閉じた。そして、熱い湯を勢いよく噴き出すシャワーヘッドを、自らの美唇に密着させた。

あんっ・・・・・・

38年間、女として生きてきて、これほどに深い悦びの気配を感じたことはなかった。佐代子は今、自分が許されない行為を犯しているような気分になった。

蜜芯に吹き付ける湯の刺激が、川原の指先のそれに思えてくる。いけないわ、こんなこと・・・・。そう思いながら、佐代子は背後から彼に抱きしめられている自分を想像する。

激しく責められる自分の裸体。経験したことのないような体位で、時間をかけてたっぷりと彼に・・・・。

いけませんっ・・・・、私には主人が・・・・・・

声をあげそうなほどの快楽の手前で、佐代子は再びそんな理性にしがみついた。今は駄目、今はこんなことをしてはいけないわ・・・・・・・・。

シャワーヘッドを肩の上に戻しながら、佐代子は明日のことを思った。明日の教室に誘ってくれた彼。

もし・・・・、もしもあの部屋で再び彼と二人きりになったら、私はいったい何をされて・・・・・。それを想像するだけで、佐代子は下腹部が熱く疼くことを感じた。

いけないわ、そんなこと・・・・。それに、主人には何と言えばいいのか・・・・。

どうにか平静さを取り戻し、佐代子はシャワーを終えた。丁寧に裸体を乾かし、何の余韻も残していない風に外に出る。

「あなた、夕食に行きましょうか」

ひどく酔いたい気分であることを隠し、佐代子は1杯だけカクテルを口にした。乾杯をしたとき、夫が何か言いたそうな雰囲気であることを妻は知った。

「どうしたの、あなた」
「実はね、佐代子、少し相談があるんだ」

「相談ですか?」
「明日、もう一度海釣りツアーに行ってもいいかな」

体奥に隠した自分自身の望みと同じであることをクールな表情で隠したまま、佐代子は言葉を返した。

「私たち、明後日にはここを発たなきゃいけないんですよね」
「そうだね、実質、明日が最終日になるんだけど、ボートの船長からもう1日行きましょうって強く誘われてね」

そう話す夫の目には、何か別の考えが宿っているように見えた。佐代子にはそれが何なのか、何となく想像できるような気がした。そして、夫は隠すことなく妻に告白した。

「昨日思ったんだけど。昼間は別々に過ごしたほうが、再会する夜が一層楽しく過ごせるような気がするんだ」

佐代子が想像したのと同じだった。夫は昨夜の出来事を忘れられないのだ。今夜だけでなく、このリゾート最後の夜となる明日も、昨日のような展開を再現させたいのだ。

夫婦そろって人気の途絶えた夜の砂浜を散歩し、キスを交わす。そして、部屋に戻った後、まるで動物のように激しく、声をあげるほどに互いの体を求めあう。

佐代子は、昨夜の記憶を思い出し、そしてすぐに、明日のことを想った。

「いいわ、あなたがそうしたいのなら」
「本当かい?」

「私はまた陶芸教室にでも行こうかしら。予約できるのかどうかわからないですけど」
「それだったら、今確認してごらん」

佐代子はレストランスタッフを経由して、川原に電話をした。彼はすぐにそれに出た。

硬い表情で話す妻の様子を、夫は遠く離れたテーブルからじっと見つめている。

会話はすぐに終わったようだった。

「どうだった?」
「大丈夫みたいです。何とか一人だけなら追加できそうですって」

二人の明日の予定が決まった。それから食事が終わるまで、妻の表情に妙に色気が増し、男をそそるような気配が強まったことに、夫は気づいた。

それは、昨夜以上に彼の興奮を高めた。

「佐代子、また砂浜の林に行こうか」
「いいわ」

そして夫婦は、昨夜のコースをそのまま最後まで辿った。夫は、昨夜を遥かに凌駕する深い興奮に溺れた。

砂浜奥の林、そしてベッド上での今夜の妻は、昨日以上に奔放に振舞った。自分の妻がそれほどに大胆で、激しく、敏感に反応することに、夫は自らの欲情を制御することができなかった。

ベッドの上で、妻は昨夜と同じく目を閉じ続けていた。強くシーツを握りしめ、歯を食いしばるほどに激しく悶え、妻はやがて腰を自分から動かそうとした。

だが、夫の行為はすぐに終わりを告げた。

「佐代子、凄かったよ・・・・・・・・」
短時間で自分だけの満足に達した夫は、ベッドで横たわる妻の裸体をそっと撫でた。

佐代子は息を乱していた。そして、夫の言葉にかすかにうなずいた後、そのまま深い眠りに就いたように見えた。

「おやすみ、佐代子・・・・・・」
明日の夜のことを今から待望し、夫は妻の手を握って目を閉じた。

一方の妻が何を待望しているのか、夫が気づくことは勿論なかった。


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