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目覚め(30)

2017 05 09
何本かのキャンドルの灯が、再び闇の中でまたたき始めている。まるで、室内をたっぷりと満たす二人の熱を告白するかのように。

窓の向こう側から届く穏やかな波の音。人妻の夫を一晩だけこの島から遠ざけた荒波は、もはや完全に消え去っていた。

ろうそくの灯りが人妻に教えている。今、自分が夫に内緒で秘めた行為に耽っていることを。

「いいですよ、佐代子さん」
彼の言葉が、部屋の静寂の中で楽し気に弾んだ。

「そうでしょうか」
そう答える人妻の声もまた、どこか楽し気なものだ。時折、クスクスと笑いあう二人の声が響いている。

そこに、単調でありながら、どこか淫靡に響くろくろの音が絡み合っている・・・・。

激しく愛し合い、共に絶頂に達した二人は、濡れた裸のまま、しばらく床の上で抱き合った。このまま別れて夜を過ごすという選択肢は、そこにはなかった。

「佐代子さん、やってみますか?」
先に口を開いたのは彼のほうだった。

「ほら、あれですよ」
裸の佐代子にそうささやきかけた彼は、その視線を木製の巨大なテーブルに投げた。

そこには、昼間彼と一緒に練り上げた粘土の残骸が散らばっていた。佐代子は裸のまま、彼の腕の中で笑みを浮かべた。

「こんな夜にですか?」
「今ならば、最高の作品ができあがりますよ、佐代子さん」

「川原さん・・・・」
佐代子は、まだ至福の熱が全身を包んでいることを感じながら、そのスリムな裸身を彼の腕の中で甘えるようにくねらせた。

そして、初めてこの部屋を訪れた午後、彼と交わした会話を思いだした。

「自分が誰で、どんな生活を普段しているんだとか、ご主人はどんな方だとか、そんな日常をきれいさっぱり忘れ去って、生まれたときの姿に戻っていただきたいんです」

「生まれたときの姿・・・・」

「そうすれば、土のほうから佐代子さんに向かってきて、ろくろを回しているだけで自然に陶器が完成します」

確か、彼はそう教えてくれた。そうやってできた陶器こそ、私自身が望んでいた陶器なのだ、と・・・・。

38歳の人妻がこれまで知らなかった悦び。今夜、彼は初めて私にそれを与えてくれた。疼きが完全に満たされた躰が、佐代子にそう教えている。

彼と一緒に絶頂に昇り詰めたとき。佐代子は、自分がどんな風に声をあげ、淫らに肢体を痙攣させたのか、全く覚えていない。

ただ、圧倒的な快感に飲み込まれ、叫ばずにはいられないほどの衝動が全身を包んだことを、その裸体が濃厚に記憶している。

バックから深く貫いてきた彼の太いものを淫らに締め付けた私。両脚をがくがくと震わせ、天井を向いたまま嬌声をあげてしまった私。

決して夫には見せたことのない妻の姿態。佐代子は今、自分が日常を完全に捨て去り、生まれたままの姿に、確かになり得たような気がしている。

「川原さん、手伝ってくださいますよね」
佐代子は彼の腕を撫でながら、艶めいた声でささやいた。

「もちろんです。一緒に最高の作品を作りましょう」

そして、二人の作業が始まった。

床に落ちていたショーツとブラで裸体を隠し、佐代子はランジェリー姿となった。彼はトランクスを身に着け、てきぱきと動き始めた。

「佐代子さん、思うままに作ってください」
「やってみます」

2人での作業といいながら、川原は佐代子の傍らで見守るだけだった。細い10本の指先を駆使し、佐代子は丁寧に粘土を練り始めた。

少し前、彼のものを淫らに握りしめ、情熱的にしごきあげていた人妻の指。彼の背に食い込み、快楽に震えていた人妻の指。

午後の人妻の指とは別の感覚が宿っているようだった。女としての悦びを遂に知った人妻の指先が、無心で土をこねていく。

下着姿のまま、佐代子は汗を肌に浮かべた。盛り上がった美乳が、時折なまめかしく揺れる。ショーツの下に盛り上がるヒップが、人妻の至福感を教えている。

「佐代子さん、そろそろろくろを動かしましょう」
しばらくの後、川原はそう言うと、昼間、回転を続けていたろくろを再び動かし始めた。

そこに置かれた粘土を見つめ、佐代子が緊張した様子で指を伸ばしていく。だが、自分でも不思議なほどに、佐代子は落ち着きをも感じていた。

「うまくいきますように・・・・」
祈るようにささやきながら作業を開始した佐代子を、川原はすぐそばで寄り添うように見つめている。

昼間のように、人妻の肉体に腕を伸ばしたりはしない。完全に講師の姿を思いだしたかのように、彼は厳しくも優しい視線で生徒を見守っていく。

「凄くいい、佐代子さん」
彼の言葉に自信を得たように、佐代子の指先が更にしなやかに、そして粘土を包み込むように動いていく。

次第に、ろくろの上で形をかたどっていく土の塊。一定のペースで奏でられるろくろの音が、佐代子の肢体を気づかぬうちに熱くさせている。

額に汗を浮かべ、佐代子は整った顔つきを少し歪めた。下着姿のまま、真剣なまなざしで陶器を作り上げていく人妻の姿には、どうしようもないほどの官能の匂いが漂っている。

緊張と情熱が入り混じった濃密な時間が過ぎていった。

「川原さん・・・・、私・・・・・・・」
「素晴らしい・・・・・」

2人はろくろの中心を見つめたまま、そうささやきあった。

佐代子の手の中には、小ぶりながらも美しい湯呑みを想起させる土が、見事に出来上がっていた。

「やりましたね、佐代子さん・・・・・」
彼が、作業を続けてきた人妻の裸身に初めてそっと触れた。ねぎらうように両肩を撫で、そして、背後から佐代子の耳元に口を寄せた。

「素敵な陶器になりそうだ」
「ええ・・・・・」
「忘れられない夜の記念に・・・・・」

ろくろを停止させ、川原は丁寧に佐代子の作品を底から切り取った。そして、それを手に取り、佐代子と共に見つめた。

「二人の作品にしましょう」
「はい・・・・・」

「時間をかけて乾燥させます。そして、僕が色を付けた後に、焼き上げますから」
そこまで言った後、川原は何かを思いついたように佐代子の耳元でささやいた。

「僕もおなじような湯呑みを作っていいですか」
「えっ?」

「佐代子さんと同じようなデザインにして、一緒に焼き上げます。そして、一つは佐代子さんにお送りして、僕の作品は大切にここに置いておきます。今夜の証言者として、いつまでもずっと」

「川原さん・・・・・」
彼の言葉が、佐代子には嬉しく、しかし同時に悲しく響いた。この島を立ち去る時が確実に近づいている。

彼と別れ、忘れたはずの日常に再び戻らねばならない時が・・・・・。

うつむいたまま、佐代子は傍らにいる彼の腕を強くつかんだ。

「佐代子さん・・・・・・」
人妻の揺れる感情に気付いたように、彼がそっと抱きしめてくる。椅子に座ったまま、佐代子は後方を向き、彼のことを見つめた。

激しく、濃厚に唇を吸いあう二人。

息を乱しながら、佐代子は彼に懇願するように漏らした。

「抱いてください・・・・、もう一度・・・・・・」
彼もまた、息を荒げ、欲情を隠そうとしない。下着姿の人妻を立たせ、正面からきつく抱きしめた。

舌を絡めあうほどのキスを交わしながら、彼が少しずつ佐代子の細い躰を後方に押していく。やがて、佐代子の美尻が背後にあるテーブルに密着した。

「早く・・・・・・、川原さん・・・・・・・」
佐代子は、自分でも信じられないほどの興奮に包まれていた。人妻のショーツに彼の指先がかかる。

「脱いで・・・・・」
瞬く間に剝ぎとられた下着が床に落ちる。佐代子のサンダルが脱げ、裸足になった美脚が広げられていく。

彼の指先がヘアを撫で、柔らかな内腿を愛撫し、そして佐代子の美唇に深く挿入された。

「ああんっ・・・・・・・」
色っぽい声を漏らし、佐代子は唇を噛んだ。

「こんなに濡れてたんですね、佐代子さん」
「言わないで・・・・・・・、ああっ、早くっ・・・・・・・・」

人妻の太腿を抱えあげ、彼は力強く肢体を持ち上げた。佐代子の剥き出しの下半身を木製のテーブルに座らせ、自らもまたトランクスを脱ぎ去る。

そそり立つ彼のものを見つめ、佐代子は思わず指先を伸ばした。

「欲しいんですね、佐代子さん」
唇を噛んだまま、彼に恥ずかし気にうなずく佐代子。

テーブルに座った人妻の熟れた美脚をV字になるほどに開き、彼は己の腰を割り込ませていく。下半身を沈め、人妻の秘所に先端をあてがう。

彼の背で、佐代子の指先が何かを予感するように震える。ブラだけで裸体を隠した美しい人妻が、覚悟を決めたように瞳を閉じた。

「僕も佐代子さんが欲しい」
「早く・・・・・・、入れてっ・・・・・・・・」

彼が力強く、腰を突き上げた。

「ああんっ!・・・・・・」
上半身を屈曲するほどに反らし、佐代子は嬌声を室内に響かせた。


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