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依頼者~緑の過去(6)

2017 08 18
金曜の深夜。

夫のいない自宅で、緑は一人、パソコンの画面に映し出された古いフィルムを見つめている。

18年前の映像だが、しかし、そう感じさせないほどに、それは鮮明だった。まるで昨日撮影されたばかりのように。

今日と同じ夏の日。映像の中には水着姿の若い女性たち数名、そして同じく水着姿で女性からは少し年上に見える男性が同じぐらいいるのが確認できた。

同封されていた写真から、緑は既にその映像のことを想像していた。そして、過去の自分を実際に目撃した緑は、汗を肌に浮かべた。

ビキニ姿の18年前の自分。周囲にいる女性たちは、皆大学の同じサークルにいた友人たちだ。

だが、卒業以来、ほとんど音信はない。それは、ある意味では、この日の記憶が理由だと言ってもよかった。

「もっと飲んで、飲んで!」
画面の中にいる男性たちが、大声で女性たちを煽っている。

畳敷きの大広間。いかにも学生たちが利用するような安宿らしい雰囲気が、画面の中から十分すぎるくらいに伝わってくる。

宴会場という形容があてはまる部屋に、水着姿でいる若者たちの姿。男女が混在して座り合い、互いの肌を触り合うようにして酒を飲んでいる。

夜の食事会。服を脱いで水着で参加すること。はしゃぎながら、そんな危ない誘いに乗った若かりし頃の自分たち。

猥雑な印象を強烈に与えるその映像は、緑の鼓動を高め、肌に浮かんだ汗を更に熱くしていく。

数分ごとに映像は切れ、次の場面に移っていく。画面が切り替わるごとに、若者たちの奔放さが増していくのがわかる。

やがて、キスを交わし始めた二人が映像に映し出された。周囲にいる男女が、手をたたいて騒ぎ立て、自分たちの興奮を高めている。

泥酔したわけではない。緑は、この日の記憶を、最後まではっきりと覚えている。

いや、はっきり覚えていたつもりだった。今日までは。

緑はこんな映像が撮影されていたことを、完全に忘れ去っていた。

隠し撮りというような雰囲気もない。であれば、男性グループの何人かが交替でビデオカメラを手にし、これを撮影していたのだ。

そうなのかもしれない。自分たちの痴態を、彼らにしっかりと撮影された。記憶の彼方では、私はそれを認識していたのかもしれない。

だが、あまりに不都合なその事実を、私は強引に葬り去り、なかったことにしていたのだ。

静まり返った自宅。喉の渇きと鼓動。そして、体奥の妖しげな疼き。人妻は次第に息苦しさを感じながら、映像を見つめ続けた。

絡み始める男女の数が増えていく。畳の上、水着姿で抱き合いながら、恥ずかしげもなく濃厚なキスを交し合う若い男女。

嫌がる女性はいない。だが、女性たちの態度には、そういう類の経験が浅いことが濃厚に表れていた。

「緊張しないで」
ささやきかける男性の声がかすかに聞こえる。

肢体を硬くする女性をやさしく撫でながら、抱擁を強めていく男たち。やがて、画面が切り替わり、カメラがどこかの上に置かれたように完全に固定される。

5組のカップルが全てカメラにとらえられている。互いの様子を確認し、挑発し合うように行為を加速させていく男たち。

男たちの手が、若い女性の美しくも無垢な乳房をいやらしく愛撫する。ビキニの上から胸を揉みしだき、畳の上に女性を押し倒していく男たち。

男たちの中の誰かが、部屋の片隅に積まれた薄い布団を部屋中に素早くばらまいていく。その上に寝かされた5人の女性が、本格的に彼らに責められていく。

「・・・・・」
緑は、画面の奥、一人の女性だけをじっと見つめていた。

唇を男に吸われながら、無防備に胸を差し出している若い女性。男の手が、美脚の隙間に動いていき、その女性が小さく首を振るのがわかる。

それは、20歳の緑自身だった。

男の顔は見えない。それは、緑の心の中にずっと隠されている記憶だ。この日だけしか会ったことのない彼。

緑に初めて男を教えた彼。

ビキニが外され、彼の口づけが下降していく。露にされた二十歳の女性の乳房が、彼に荒々しくしゃぶられる。

「あっ・・・・・・」
映像からは、複数の女性の声が聞こえてくる。だが、緑は自分の喘ぎ声をはっきりと聞き取ることができた。

私が、女性として初めて漏らしてしまった甘い声・・・・。

全て、彼がリードしてくれた。丁寧に、時間をかけて全身を愛撫され、緑の肢体から緊張が解け去っていく様子がわかる。

やがて、水着を全て剝ぎとられ、全裸にさせられた緑の躰が、白い布団に溶け込むように横たわる。

彼の手で、ゆっくりと広げられていく緑の両脚。まだ、何も知らない緑のあそこに、彼の指先が伸びていく。

緑の股間で、小刻みに震え始めた彼の手。

「あっ・・・・、あっ・・・・、あんっ・・・・」

若さを溢れさせた儚げな喘ぎ声が、緑の耳に届く。布団の上で指先を震わせ、初めての快感に戸惑うように首を振る20歳の私・・・・。

布団の上で震える緑の指先。体を押し倒した彼と、まだ慣れぬキスをしながらも、少しずつ、悶えていく裸の緑。

彼の両手が、緑の膝を大きく広げる。

彼のたくましく跳ね上がった腰のものが、僅かに映像の中に見えた。パソコンを見つめたまま、緑は唇を噛んだ。

そして、彼がゆっくりと腰を進めていく。

「ああっ、駄目っ・・・・・・・・・」
苦悶する喘ぎ声が、それが初めての体験であることを男に告げている。緑を見つめながら、彼は腰を後退させ、そしてまたゆっくり前に動かした。

顎を天井に向けるようにして、緑が何かに屈するように全身を震わせた。そして、彼は最後までを緑の秘所に挿入した。

「ああんっ!・・・・・」
その瞬間、牝の自我に目覚めたような息を自分が吐いたことを、緑は初めて知った。

ゆっくり、少しずつ腰を動かし始める彼。首を振って、その衝撃に耐えられないことを伝えようとする緑。

彼の手が、緑の美乳を絶え間なく愛撫する。桃色に突起した乳首。優しく腰を突きながら、緑を少しずつ高めていく彼。

緑の表情に、悦びの気配が僅かに浮かぶ。

「ああっ・・・・・」

深く体を前傾させた彼が、次第に突きの勢いを増していく。抱き合うように体を重ねあう二人。緑の手が彼の背に伸び、何かを探すように動き回る。

汗ばんでいく彼。何度も肢体を震わせ、息を乱す緑。大きく広げられた緑の細い脚が、なまめかしく揺れる様子がしっかりと撮影されていく。

唸り声をあげる彼。男の背に食い込む緑の爪。その唇から、惑いと悦びが入り混じった短い嬌声が漏れていく。

「あっ!・・・・、あっ!・・・・、あっ!・・・・・」

そして、男はフィニッシュを迎えた。その瞬間、緑は痙攣するように全身を跳ね上げた。素早く腰を引き、彼は己の情熱を緑の裸体に激しく振りかけた。

ハアハアハア・・・・・

布団の上で、息を乱す私。

初めて男性に抱かれた後、自分がもう、過去の自分と同じではないことを誇るように、惜しげもなく裸体を曝け出した私。

映像は何度か切れながら更に続き、何組ものカップルが同じように愛し合う光景が繰り返された。

そして、突如、画面の中の雰囲気が変わった。

Tシャツ姿のラフな格好になった男たちが、部屋を出ていく。男性グループの誰かが、最後までカメラを持ち続けているようだ。

見送る女性たちと、男たちが何やら楽し気に話し合う様子がうかがえる。一人、熱心に声をかけている女性がいる。緑だ。

会話はどういうわけか聞こえない。だが、その内容を匂わせるように、男たちはある行動をとった。

何枚かの千円札を揃え、テーブルに置く男たち。それを見て、満足げに笑みを浮かべた女性もまた、緑だった。

ハアハアハア・・・・・

椅子に座ったまま、現実の緑もまた、息を乱している。

20年が経過し、人妻となった緑。

今夜は眠ることなどできない。ぐっしょりと濡れた肢体を感じながら、緑は一人、浴室に向かった。


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