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依頼者~緑の過去(9)

2017 09 08
弁護士としての冷静な判断が、今はできなかった。

それは彼が決定的なビデオ映像を持っているからであり、自分が初めて抱かれた相手だからでもあった。

それだけではない。椅子に座ったまま、彼の足の指先でたっぷりといじめられた肉体が、妖しく疼き始めている。人妻は、そんな風に誰かに刺激された経験など、過去に一度もなかった。

「待ってください」
上着を脱いで立ち上がった彼に対し、緑は椅子に座り続けることしかできなかった。まるで、そこに縛りつけられているかのように。

「次の面談なんかありませんね、緑先生」
人妻を見下ろす彼に、興奮したような様子はなかった。銀行員としてのまっとうな雰囲気がそこにはまだ溢れている。

それが、緑の肢体を一層火照らせた。

不倫相手で会った若い女性行員に別れてもらえないんです。私のベッドでのテクニックにすっかり溺れてしまったようなんですよ。

彼のそんな言葉が緑の脳裏をよぎる。

人妻は、シャツの下に浮かんだ汗を再び感じた。

「そのビデオと写真を受け取ったからには、もう少し我慢してもらいますよ、緑先生」
「・・・・・」

「もっとも、そのうちに違う気分になってくるかもしれませんが」
「自惚れないでください」

弁護士の威厳を取り戻したかのように、緑はきつい口調で彼に言った。その声がドアの向こうに届いたのではと、緑は一瞬不安を覚えた。

面談室のドアは一応の防音性を備えたものであった。それでもやはり緑は声が漏れてしまうことを恐れた。

今、彼に発した声だけでなく、これから私が漏らしてしまうかもしれない声を・・・・・・

「確かに自惚れているかもしれませんね」
彼はそう言いながら、自分がこれまで座っていた椅子を緑の椅子のすぐ横に置いた。そして、人妻の至近距離に彼は座った。

「私が自惚れているかどうか、緑先生に判断してもらいましょう」
「・・・・・」
「人妻であり、弁護士である緑先生であれば、冷静にそれを判断いただけるはずですよね」

彼の手が、緑の紺色のタイトスカートにそっと置かれた。

「やめてください」
「自信がありませんか」

「・・・・」
「自惚れた私の行為に耐えきるだけの自信が」

「そういうわけではありません。ただ」
「ただ?」

「当たり前ですが、こんなことをされた経験は一度もないですから」
「私も同じですよ、緑先生」

「・・・・・」
「過去のビデオを放棄することの交換に、女性の体を要求するなんていう行為は」

太腿の辺りに置かれていた彼の手が再び離れ、緑は密かな安堵を抱いた。ドアの向こう側からは、女性スタッフ2名がいつも通り働く気配が伝わってくる。

「約束は守りますよ、緑先生」
「・・・・・」
「緑先生に私のテクニックを知ってもらったなら、これは全てお返しします」

机に置かれたものを見つめた後、彼は人妻に熱っぽい視線を注いだ。緑はそれから逃れるように、顔を僅かに横に向けた。彼の手が、人妻の上着に伸びた。

「暑いんでしょう、緑先生」
ストライプ柄のスーツを彼に直接つかまれ、緑は何も言うことができなかった。

「脱いでください、これを」
片手だけを器用に動かし、彼の指先が人妻の上着のボタンをゆっくりと外し始めた。

「自分でやります。おっしゃる通り、少し暑いですので」
素直にそう告白し、緑は椅子に座ったまま、スーツのボタンを全て外した。それを脱ごうとする人妻に、彼の手がさりげなく添えられる。

まるで彼に服を脱がされるような、そんな気分を緑は覚えた。

「本当に綺麗になりましたね、緑先生」
人妻のスーツを向こう側の椅子の背にかけ、彼は感慨深そうな口調でそう言った。

「あの海で出会った時も抜群に可愛かったですが。そこに美しさと色気が加わりました」
白いシャツに包まれた緑の肩の辺りを撫でるように、彼の手がゆっくり動き始めた。

「やはり人妻になったからでしょうか、緑先生」
人妻の細く長い腕を楽しむように、彼の指が何度もシャツの上をたどる。横にいる彼を無視し、緑はただ前だけを見つめた。

「別に褒めていただく必要もありませんわ」
「事実を言っているだけですよ。ご主人が毎晩離さないでしょう、緑先生のことを」
「そんな風ではありませんから、私たちは」

彼を見つめ、緑は思わずそんな言葉を発してしまった。それは事実であり、秘密でもあった。夫に問題があって長い間抱かれていないことは、人妻だけの隠し事であった。

緑の言葉に答えることなく、彼は指先を動かし続けた。それは何の刺激にもならないわよというような雰囲気で、緑は姿勢を正して椅子に座り続けている。

彼の指先に少しずつ力が込められていく。ただなぞっているだけの動きだったのが、人妻のふくよかな腕をマッサージするように運動を始めた。

緑は、密かにつばを飲み込んだ。

人妻の疲れたスポットを探るように、丁寧な愛撫を与えて始めた彼の指先。顔を再び斜め下に向け、緑は沈黙を守った。

「力を抜いてください、緑先生」
「・・・・・」
「弁護士であること、人妻であることを忘れて」

そんなことができるわけはない。緑にはその二つが誇りであり、生きている意味でもあった。

それを一瞬にして奪い去ってしまいかねないこの古いビデオ映像のためにも、彼の行為をもう少し、受け入れる必要があるのかもしれない。

「まだ暑いんですか、緑先生」
彼の指先がシャツの上方に動き、人妻の白いうなじに直に触れた。一瞬、緑の肢体が僅かに震えるように動いた。

「くすぐったいですか」
「いえ」

耳付近から首筋を撫で、愛撫するように動く彼の指。耳の後方を指先でなぞられるだけでこんなに震えてしまうことを、緑は初めて知った。

膝の上の指先に僅かに力を込め、人妻は熟れた肢体を椅子の上で少しばかり動かした。

首筋から鎖骨付近、シャツの下を確認するように動いてくる彼の手。その視線は、純白のシャツの下に盛り上がっている人妻の胸元に注がれている。

「いい胸をされてますね、緑先生」
「・・・・」
「これぐらいの胸が、一番男性をそそるんですよ」

彼の口が緑の耳に接するほどに近づいている。腕から肩、背中のあたりを時間をかけて揉みしだかれ、緑はかすかな息苦しさを感じ始めていた。

そのとき、部屋の外から突然声が届いた。

「先生、お茶は大丈夫ですか?」
絶対に入ってこないで、という指示に従いながら、女性スタッフの一人がドアのすぐ向うからさりげない風に声をかけてきた。

その瞬間、シャツの上から人妻の乳房に彼の手がそっと置かれた。

「やめてください・・・・」
思わず、緑はささやくような声で彼に訴えた。

「先生、麦茶でも出しましょうか」
上半身をたっぷりと愛撫したばかりの彼の指が、今度は人妻の盛り上がった胸元をそっと揉んだ。

「いえ、大丈夫よ・・・・」
ドアの向こうに向かって発せられた自分の声は、明らかにいつものそれとは違った。再び、彼の指がゆっくりと人妻の柔らかな美乳を弄んだ。

緑は小さく首を振って、唇を噛んだ。

「じゃあ、必要になったら声かけてください、先生」
「ええ。そうするわ・・・・」

何とかそう答えた緑は、彼の手の上に自分の手を重ねた。そして、美しく整った顔をほのかに染めたまま、彼に訴えた。

「困ります」
「もう降参ですか、緑先生」

彼の挑発的な言葉が、人妻の強気な感情を刺激した。いったん置いた手を再び退け、緑は彼に言った。

「そういうことではありませんわ」
「じゃあ、もう少し我慢してください」
「別に我慢なんかしていませんが」

彼は、椅子を更にずらし、緑の肢体に擦り寄った。そして、今度は両手を伸ばし、人妻の柔らかな胸の双丘を大胆に包んだ。

彼に気付かれぬまま、人妻は足の指先に力を込めた。

「緑先生、あの映像はご覧になりましたか」
人妻の耳元でささやきながら、彼の10本の指がゆっくり動き始める。

「いえ・・・・」
「嘘ですね。何度も見たんじゃないでしょうか」

豊かな膨らみを確かめるように、彼の指がねっとりと動いてくる。手のひらで頂上部を撫でるようにしながら、指先が縦横無尽に膨らみを這う。

小さく首を振り、緑はテーブルの下でこぶしを握るように指に力を込めた。つま先を立てるように、美脚を震わせる。唇を噛み、懸命に息を整えようとし始めた人妻に、彼はささやき続ける。

「初めて男性に抱かれたときの自分を見つめて、興奮したでしょう」
緑の乳房の頂上部の何かを探すように、手のひらが動く。シャツとブラが、人妻の敏感な部分を確かに刺激する。

再び首を振る人妻。汗がシャツの下、豊かな胸の谷間に浮かんでいるような気分になる。唇をもう一度噛みしめ、やがて、緑は集中するように瞳を閉じた。

「一人で見たんですね、緑先生」
「・・・・・」
「いけない奥さんだ」

美乳の頂きに、確かに盛り上がった箇所が感じられ始めた。シャツ越しにその突起を探り当て、彼は指先でつまむようにいじめた。

「あっ」
うつむいたままの人妻の唇が開き、ほんとうにかすかな、甘い息が漏れた。


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>> 作者都合により、次回更新、9月22日とさせてください。申し訳ございません。
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