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依頼者~緑の過去(19)

2017 11 27
深夜にまで事務所に一人残ることは、緑にとって決して珍しいことではなかった。

事務所の自室。今、緑は自分の椅子に深く腰を沈めている。

いつもと違う点と言えば、それは照明だった。深夜だというのに、緑は部屋の照明を点けることなく、闇の中に自分を置いていた。

だが、完全な闇でもなかった。その空間には、外に広がる街の灯りがカーテンを越えてぼんやりと差し込んでいた。

こんな時間だ。タクシーが多いのだろう。速度をあげて走っていく車の音が、閉め切った窓の向こうから時々届く。

そして、もっと濃厚な光があった。緑の机の上に置かれたノートパソコンだ。そのディスプレイは室内の暗闇にまぶしいほどの白さを与えていた。

緑はさっきからじっとパソコンの画面を見つめていた。

弁護士事務所の主のものらしく、椅子は大きくて立派なものだった。

しっかりしたひじ掛けまで備わった椅子に座り、緑は画面を静かに見つめている。

その真剣なまなざしには、何か差し迫った色が感じられるような雰囲気があるようにも見える。

服装に乱れはない。清楚な白いシャツを身に着け、姿勢を正してそこに座り続けている人妻。

外の幹線道路を何台もの車が走り抜けていく。

夜が更けていくという空気が、次第に室内に歩み寄ってくる。

カチカチという壁時計の針の音。ふだんは聞こえることもないが、今ははっきりと部屋の空気を刻み続けている。

緑の姿勢に揺らぎはなかった。

細身の肢体を崩すことなく、背をまっすぐに伸ばした人妻の姿勢は、魅力的に突き出した胸の曲線をはっきりと描き出している。

白くなまめかしい首筋が、官能的にシャツの隙間からうかがえる。

細い手首。

緑の手は、パソコンのキーボードに置かれてはいなかった。

机の上、左右の指を重ね合わせるように、人妻の華奢な手が交錯している。

緊張気味の人妻弁護士の表情は、いつも以上に色っぽく見える。

しばらくの後・・・・・・。

静寂が支配しているはずの室内で、僅かな空気の乱れが生じた。

机の上の緑の指が、僅かに動いた。

それは互いの指を求めあうように、或いは手の表面にある何かをなぞるように、少し妙な動きをした。

椅子の上で、緑が少しだけ腰を動かした。

それはもう一度仕事に集中しようと、姿勢を正す時の動きそのものだった。

パソコン画面の光を浴びる人妻の美しい表情に、何も変化はない。

ただ、その指先だけが、先ほどまでは全く動かなかったのに、互いを掴みあう風に、僅かに震え始めている。

何かに我慢するように、その指先には確かな力がこめられている。

形のいい顎、そして唇。緑は、互いの指を絡ませ合いながら、少しだけ唇を噛むように口を動かした。

緑の呼吸まで聞こえてくるような、室内の静けさ。

カチカチカチ・・・・。音を奏でて動き続ける壁時計。人妻は、深呼吸をするように、少し深い息を吐いた。

もう一度、緑の指先が互いを求めあうように動いた。

それは、明らかにおかしな動きだった。緑は自分の手の甲に爪を立てるように、指先に力を注いでいた。

緑が、今度ははっきりそうとわかるように、唇を噛んだ。そして、視線をパソコンから逃がすように少し泳がせた。

椅子の上で、人妻の引き締まった下半身がもじもじと動く。

息を吸い、そして吐き出す人妻の呼吸が、どことなく熱を帯びて部屋に漂い始める。

唇を噛んだまま、緑は僅かに首を振り、再びパソコンの画面を見つめた。

先刻から、そこにはある動画がずっと映し出されている。

音声は消したまま、ただ映像だけを緑は見つめていた。

椅子が少しまわるほど、緑の躰が動いた。何もなかったかのように、人妻はすぐに椅子の位置をもとに戻そうとする。

さっきより、緑の顔が少し下方に動いていた。

椅子に深く座り始めたせいだ。

再び、緑の深い吐息が鼻と唇から漏れた。それは濃密な人妻の熱を告白するような息遣いだった。

ハア・・・・・・・・・、ハア・・・・・・・・・・・

唇を僅かに噛みながら、緑は両手をひじ掛けの上に置いた。

そして、少しうつむくように下を向きながら、どうにかPC画面を見つめ続けた。

ひじ掛けをつかむ緑の指が、きゅんと震えるように動く。

同時に、人妻の口からまた熱い息が漏れた。

まだ声にもならない、僅かに乱れた吐息。椅子の上で、緑が肢体を動かす頻度が増えていく。

窓の外に行きかう車の音に集中するように、緑は視線を更に下に向けた。もう人妻は、パソコンの画面を見つめようとはしなかった。

そこには、過去の自分の恥ずかしい姿がずっと映し出されていた。

何かを覚悟するように、人妻はそっと瞳を閉じた。

カチカチカチ・・・・・・・。時を刻む針の音。

やがて、そこに緑の消え入るような、しかし、濃厚な息の音が絡み始めた。

「あっ・・・・・・・・・・・・」

椅子の上、人妻の上半身がぴくっと小さく弾けた。

ひじ掛けを強く掴む人妻の10本の指。

「あっ・・・・・・・、うっ・・・・・・・・・」

うつむいたままの緑。

目を閉じたまま、きつく唇を噛みしめる。

美しい表情が、妖しく歪んでいく。

くちゅ・・・・・、くちゅ・・・・・・・・・

何か湿った音が、時計の針の音と交わり始めた。

何度も震え始める椅子の上の緑の躰。

ひじ掛けにしがみつくように指を緊張させ、緑は下方を向いた。

熱い息遣い。

ハア・・・・・・、ハア・・・・・・、ハア・・・・・・・・・

人妻の額に苦悶のしわが寄っていく。

「駄目っ・・・・・・・・・」

深夜の自室で、緑は初めてはっきりとした言葉を漏らした。

その直後、人妻は椅子の上で激しく肢体を弾けさせた。

「あんっ・・・・・・・・」

顎を上に向かせ、緑は艶めいた息を宙に向けて吐いた。

机の下にいる男が、緑の熟れた太腿をもっと強く押し広げた。

「いやんっ・・・・・・・・・・」

緑の最奥の部分は、もう何分も前から剥き出しにされていた。

スカートの中、彼は指先での行為を止め、初めて大胆に人妻の美唇に吸いついた。

「はうっ・・・・・・・・」

天井を向くように肢体を跳ね、緑は激しく首を振った。

椅子から床にかけて、机の下の闇に一筋の光が走っている。それは、人妻の漏らした蜜がたっぷりと滴り落ちた跡だった。
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