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妻の素顔(4)

2010 01 31
定刻通りに成田空港を飛び立った飛行機は、順調にフライトを続けています。

「ねえ、もう匂いがきついと思わない?」
「はは、そうだな・・・・」

食事を終えた私たちは、ゆっくりとカクテルを楽しんでいました。普段あまりアルコールを口にしない妻も、久しぶりの解放感に浸るように、自らそれを注文しました。

私は妻の指摘に、思わず笑みを浮かべました。日本ではあまり見られない強い香辛料を使った食事のせいか、確かに機内には独特の香りが漂っていたのです。

「でも辛いのは優里好みじゃないか・・・・」
「ふふっ、そうね。楽しみだわ、向こうに行ってからの食事が・・・・」

機内には日本人観光客、ビジネスマンの姿もちらほら見えますが、圧倒的に外国人の姿が目立ちました。食事が醸し出す香りとともに、周囲の雰囲気は、私たち二人を一気に異国への気分へといざなってくれるものでした。

今回の旅行に私たちが選んだのは、美しい世界遺産が複数存在することで有名な、アジアのとある国でした。妻の望みを叶えるために最適だと私は思ったのです。

秘境、というイメージも強い国で、普通の観光客であれば生涯、足を運ぶことはないのかもしれません。それだけに、私たちはこの国を選んだのでした。

二人にとって、この旅行を長く印象に残る素敵なものとしたかったのです。

何時間かのフライトを経て、私たちは目指す国の首都郊外にある国際空港に到着しました。現地時間は夕方で、到着便も多いのか、入国カウンターには長い行列ができていました。

「さて、早速洗礼を受けるとするか」
「そうね」

何とか入国を終え、荷物をピックアップした私たちは、いよいよ到着ロビーへと足を踏み入れました。鉄製の手すりがあり、そこにずらりと並んだ現地人たちがこちらを見つめています。

男性がほとんどですが、女性もいるようです。私たちは少し緊張しながらも、ある人物を探しました。私たちを出迎えに来ているはずのガイドです。

私たちは、ツアーではなく、完全に個人旅行として今回のスケジュールを組みました。そして現地での移動用に、ガイド兼運転手つきのレンタカーを借りました。外国人が自分で運転できるような国ではなく、それに、運転手をつけたところで、それほど高額ではないのです。

「確かここに迎えにきているはずだけどな・・・・」
「ええ・・・・、あっ、あそこじゃないかしら・・・・」

妻が示した方向に、一人の男性が大きなサインボードを胸に抱えて立っていました。そこには確かに私たち二人の名前が書いてあります。

「ミスター&ミセス オオニシ?」
私よりは少し年少でしょうか。30代半ばという印象の男が、笑顔を浮かべて私たちにそう声をかけてくれました。

「そうです、そうです・・・・」
思わず日本語で答えてしまった私を見て、優里が愉快そうに笑います。

「フライト、ダイジョウブデシタカ?」
ガイドが流暢な日本語でそうしゃべったので、私たちは少し驚きました。

「日本語お上手ですね?」
「オキャクサン、100%、ジャパニーズデスカラネ」

人柄の良さそうな笑みを浮かべる彼に、私は安堵しました。これから数日間共に過ごすことになる担当者が、感じが悪かったらどうしようか、と少し不安だったのです。

「サア、イキマショウ」
彼はそう言うと、優里のスーツケースに慣れた様子で手を伸ばし、自分で転がし始めました。

「サンキューソーマッチ」
礼を述べる優里に対し、全く問題ないとでも言うような笑みを送り、彼は私たちを先導していきます。

「よかったな、良さそうなガイドさんで・・・・」
「ほんとね・・・・・」

小声でそんな風に話しながら、私たちは屋外に出て、やがて駐車場へと到着しました。そして白い平凡なセダン車に乗り、私たちはホテルを目指しました。

暑い印象があるその国ですが、11月という季節のせいか、随分と涼しい空気が私たちを出迎えてくれました。日本とさして変わらないような印象です。

「結構涼しいんですね・・・・」
「エエ、チョウド乾期、ハジマリマシタ・・・・」
「そうか、乾期か・・・・・」

確かに、その国の観光は乾期である11月から3月あたりがベストと、ガイドブックにも載っていました。この期間は、ほとんど雨も降らないらしいのです。

空港からホテルまでは車で30分ほどでした。舗装道路でしたが、その秩序のなさに、私たちは驚き、そして何度も声をあげて笑いました。

2車線の道路に、車が4列にも5列にも並んでひしめいています。交差点付近では、自転車しか通れないような路肩スペースに車が強引に突っ込み、そして我先にと激しいバトルを繰り広げます。

もっとも、そのようなエリアでは当然車はのろのろと進むため、深刻な事故が起こるわけでもないようです。私たちは、好奇心を刺激されながら、初めて遭遇するその光景を存分に楽しみました。

「凄いところに来ちゃったな、優里・・・・・」
「ほんと・・・・、想像はしてたけど、何だか、笑っちゃうわ・・・・」

鳴り止まぬクラクションの嵐に包まれ、外の景色を眺めながら、後部座席で並んで座る私たちは、どちらからともなく手を握り合っていました。家の外で、こんな風に妻の手を握るなんて、本当に久しぶりのことでした。

妻が少し甘えるように、私の肩にもたれかかってきます。私は優里のスリムな肢体をそっと抱き寄せました。それだけでもう、私は戸惑うほどに興奮していました。



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