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脅迫(8)

2010 03 01
「奥さん・・・・・、奥さん・・・・・」

誰かが自分のことを呼んでいる。志織はそう感じながらも、すぐに反応することができなかった。体が言うことを聞かない上、意識も覚醒しない。

いったい私はどこにいるの・・・・・。深い睡眠に迷い込んでいた志織は、自分が涼介との登山中に道に迷ったことを、完全に忘れ去っていた。

「うーん・・・・・」
目を閉じたまま、志織はそんな声をあげ、そしてかすかな記憶の紐を手繰り寄せようとした。

そうだ。暗闇の中で途方にくれていたとき、赤木と名乗る男に救出され、避難小屋へとやってきたのだ。そしてその男は救出活動の様子を見てくるといって、一人で外に出て行った・・・・。

その後、いったい自分に何が起きたのだろう。いつの間に眠ってしまったのだろうか。志織は、自分が床に横になっていることを感じながら、そう思った。

「奥さん・・・・、さあ、目を開けるんだ・・・・・」
再び聞こえてきたその声に対し、志織はようやく瞳を開いた。ぼんやりとした目の前の景色が、やがてくっきりとした像となって志織に届く。

依然としてコンロには火がついていた。そのせいか、小屋の中はかなり暖かくなっている。室内を眩しいほどに照らすランタンも天井から吊るされたままだ。

小屋の中央に立っている赤木の姿を、志織は確認した。その傍らに、ぐったりとした少女を抱えている。それは志織の娘、奈津美だった。

「・・・・・・・」
何が起きているのか、志織には理解することができなかった。夢の続きでも見ているのだろうか。戸惑う志織を、赤木は愉快そうに眺めている。

「赤木さん・・・・・、いったい何してるの?・・・・・・」
目の前に娘がいることを現実として受け止めることができないまま、志織はかすかな声でそうつぶやいた。

「やっと目が覚めたようだな、奥さん・・・・・」
赤木の様子は、この小屋を出る前とは、明らかに違っていた。彼の目には今、ぎらぎらとした不気味な光が存在していた。

「この女の子、奥さんのお嬢さんでしょう?・・・・」
男の言葉に、志織はようやく我に返った。立ち上がろうとしたそのとき、志織は、赤木の手にサバイバルナイフが握られていることに気づいた。白く光るその刃は、奈津美の頬にぴたりと当てられている。

「奈津美!・・・・・・、奈津美!・・・・・・・・」
目を閉じたまま、赤木に抱えられている娘に対し、志織はそう叫んだ。だが、娘は眠っているのか、志織の呼びかけに全く反応しない。

「ねえ、冗談はよして、赤木さん!・・・・・」
志織はそう叫びながら、再び立ち上がろうとした。しかし、赤木は少し後ろに下がりながら、それを制した。

「動かないで、奥さん・・・・。お嬢さんに危害を与えますよ・・・・」
登山中、自分達を救出したあの親切なな登山家は、もうそこにはいない。完全に狂気にとりつかれた男を目の前にし、志織は動くことができなかった。

「放して!・・・・、娘を放してください!・・・・」
「冷静になってくださいよ、奥さん。お二人がおとなしくしてれば、私だって変な真似はしませんから・・・・」

赤木は、そう言いながら志織の隣にいる涼介に視線を投げた。同じように床に横になっている彼は、まだ眠りから覚めていないようだ。

「少し薬が効きすぎたかな・・・・」
笑みを浮かべながら、赤木がそう言った。その瞬間、志織は気づいた。あのスープに何か入っていたのかもしれない。

久雄はいったいどこにいるのだろうか。どうして、赤木は娘だけを連れているのか。志織のそんな疑念に答えるように、赤木が言葉を続けた。

「山の中でご主人とお嬢さんははぐれたようですよ。私が見つけたのは、こちらのお嬢さんお一人ですからね。すぐにこちらに連れてきて、少しばかり眠ってもらうことにしました。ご心配なく、朝になればちゃんと目は覚ましますよ」

志織にそう言いながら、赤木は更に後ろへとゆっくりと下がり、小屋の壁に背中をつけた。そして、眠り続ける奈津美を隣にしたまま、床にしゃがみこんだ。

志織がいる場所からは、3、4メートルしか離れてはいない。だが、娘の頬に刃物が光っているその状態で、志織はどうすることもできなかった。

「いったい、あなたは何者なの?・・・・」
目の前の男の姿を見つめながら、志織は本心からそう漏らした。

「ははは、さっきご説明した通り、登山が趣味の平凡な会社員ですよ。前科者でもないし、こんな犯罪行為が好きなわけでもない」

「だったら、なぜこんなことを・・・・」
長い脚を崩した格好で床に座ったまま、志織は赤木にそう訴えかけた。

「ちょっとした心の迷いですかね」
「心の迷い、ですって?・・・・」

「ええ。まさか山の中でこんなに美しい奥さんに会えるなんて考えもしてませんでしたから」
その言葉に、志織はすぐに反応することができなかった。

「一人で山に登っていると、人恋しくなるものです。男が街でも見かけないような魅力的な女性に山で出会えば、妙な気分になっても不思議じゃないでしょう」

志織は黙ったまま、赤木のことを射るように見つめた。久雄のことを思いながら、志織は懸命に心の中で叫んだ。

あなた、どこにいるの・・・・・、早く来て・・・・・・・

「奥さん、夜は長いですよ。お互い、今夜は楽しみましょう」
奈津美の頬をぺたぺたとナイフで叩きながら、赤木はそうつぶやいた。

「ふざけないで!・・・・、自分が何してるのか、あなた、わかってるの!?・・・・」
叫び声をあげる志織を、赤木は余裕のある表情で眺め続ける。

「叫んだって無駄だよ、奥さん。こんな山奥に誰も来やしない」
膝を曲げたまま足を投げ出し、背後の壁にもたれかかった赤木はそう言った。

自らの立場を理解したかのように、志織はただ押し黙ってしまった。そんな目の前の人妻に、男は最初の指示を出した。

「奥さん、まず服を脱いでもらいましょうか・・・・」



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Comment
ひょえ~っ!!!

唐突過ぎます~。

っが、志織さんのみだれる所も楽しみです。
そういうことだったんですね・・ だれが だれを 脅迫するのかな?って思ってました。でも 少し恐い((゜Д゜ll))

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